【Migrants Network】移動という体験、そして決断(Youth Column ユースコラム No.22 )

投稿者: | 2019年6月28日

Youth Column ユースコラム No.22

移住者と連帯する全国ネットワーク・情報誌「Migrants Network」(年6回発行)があります。今回は、204号(2019年6月発行)の中から素敵なコラムのご紹介です。このコラムは、多様な文化背景の中で育った若者が、それぞれの視点で日常の思いや経験を綴ったものです。

Mnet201906投稿者:守部(津田)友理香さんのご紹介

日本人の父とフィリピン人の母をもち、日本とフィリピン、アメリカで子ども時代を過ごす。現在は、臨床心理士として医療機関に勤めている。

上記は、記事より抜粋した彼女のプロフィールです。私は、多文化精神医学会の研修会で彼女と知り合い、その日より、あたかも昔から熟知した仲のような濃さでお付き合いさせていただいています。そして、同じTCKでありながら、お互いの着目点は微妙に異なります。

その違いがありながら、わたしはDiversity視点を持ち合わせる者同士の居心地の良さを感じざるを得ません。TCKの解説(定義)によくある帰属意識を彼女の中に見出すことができます。

TCK仲間の彼女が執筆したコラムをご紹介します。ゆったりとした表現でありながら、真実を短く言い当てる鋭敏さを感じる文章に、わたしは非常にドッキリしました!TCKの皆さん、そしてTCKを育てる皆さんに読んでいただきたいです。

移動という体験、そして決断 (一部抜粋)

子どもの頃から、移動というものをたびたび「体験させられ」てきました。親の転勤に伴う転居を重ね、国をまたぐこともしょっちゅうでした。移動のたびに、そこでの縁を断ち切り、余計な荷物を捨て、リセットをさせられてきたのです。

少し大人になった今、嫌だったことも、嬉しかったことも、以前よりは客観的に捉え、ポジティブに考えられるようになったと思います。しかし、子どもにとって移動は、まったく予期しないタイミングで、突然やってきます。その出来事を思い出すたびに、胸がギュッと押しつぶされそうになります。

既に大人たちによって決められたことで変えがたいことは分かっていたため、哀しくも恨めしい、後戻りできないような感覚に陥ります。慣れ親しんだ人ともう会うことがでいない、その場所にまた戻ることはできないという喪失感。次に押し寄せてくるであろう大波の前に立たされ、飲み込まれてしまいそうな不安感。

それは、子どもにとって言葉にすることは難しく、親には決して言えない類の感情です。その時、心の中にそっとしまったとしても、その引っかかりがその後、ずっと残ることはあるでしょう。

(出典;Mネット204号(2019号6月発行)特定非営利活動法人 移住者と連携する全国ネットワーク)
http://smj.buyshop.jp :ウェブ版の購入もできます。

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